2018年04月01日

★アガサ・クリスティ「クィン氏のティー・セット」を再読したが消えないまま残った疑問(モヤモヤ感)(※ネタバレ注意)

昨年暮れ頃からアガサ・クリスティのシリーズもの短編を読み始めた。
読んだ探偵シリーズは、まずパーカー・パイン、ミス・マープル、ポアロ、クィン、おしどり探偵(これはまだ数編のみ)という順番。

最初に追いかけたのは、パーカー・パインもの
パーカー・パイン登場』(クリスティー文庫)は、後半の休暇旅行中のものより、
前半の依頼人が相談に訪問して来るパターンが面白かった。
ハンサムな青年・ラットレルや特に美貌のサラが役どころを得て登場すると、
文庫解説にもあったが、TVドラマ「スパイ大作戦」のような展開となりワクワク。
サラリーマンの事件」◯の平凡で退屈な主人公は、機密文書を運ぶ旅行を命ぜられる。
行きもそして帰り(サラ登場)もハラハラドキドキのスパイ風ロマン。
特に緻密な長期計画を感じさせる「大金持ちの婦人の事件」◎は秀逸だ。
農家の働きもの主婦が後に大金持ちになったものの夫が死に、
何の楽しみも生活のハリも無いという悩み相談。
これは「スパイ大作戦」によくあった、容疑者を別世界に放り込んで疑念の渦に置いてボロを出させる作戦を想起させた。
依頼の婦人に新たな生きがい(苦労)を気付かせる遠大な作戦が展開される。
そして『黄色いアイリス』に収録の二編も読んだ。

パインの次に追いかけたのはクィン氏もの&サタースウェイト氏
私が最初読んだのは『謎のクィン氏』(クリスティー文庫)
ハーリ・クィン氏ものは気に入ったパインものよりも私好みで一番面白かった。
特に面白いのは渦中のヒロインの吐露。
女性作家ならでは視点、ヒロインが語る想いなどに惹きつけられた
特に最後の「道化師の小径」◎が印象的だったので、
今度読み返す時には別訳をと思い、
ネットで『クイン氏の事件簿』(創元推理文庫)を購入した。

次は『愛の探偵たち』に収録の「愛の探偵たち」(あまり好みでは無い)
そしてクィン氏もの最後が『マン島の黄金』収録「クィン氏のティー・セット」
図書館には文庫版が無かったので、『マン島の黄金』(1998)だけがハード版だ。

読み終わったが「クィン氏のティー・セット」ではちょっと困った。
何かしっくりしない読後感が澱のように残ってしまった
展開の中にまだ氷解していない伏線などがあるのか?
こういう時は少し時間を置いてから読み直そうと即挑戦をしなかった。
ただ調べたのはクィン氏がサタースウェイトに与えたヒント「赤緑色盲」
★色覚異常の人が見ている世界はどれだけ違う? 再現してみた***BuzzFeed 2016/11/18
https://www.buzzfeed.com/jp/shunsukemori/partial-color-blindness
この記事によると様々な色覚異常があり、その実例を画像で眺めると、
鮮やかな赤系・緑系・青系はほとんど消えて全体的にくすんだ世界となるようだ。
一番の驚きは豊かな彩りの料理が旨そうには見えないことだ。
「クィン氏のティー・セット」のティモシーにカップの色はどう見えているのか??
赤も緑も青も大きな違いの無い濃淡の色彩世界なのか?


今朝久々に再読したが疑問がより鮮明になっただけで、澱は残ったままだ
大事なシーンの確認
自動車が故障しサタースウェイトはカフェ&陶器店にいる
入って来たクィン氏に気付き会話
サタースウェイトはこれから訪問する友人トムの家族について説明
そこにトムの長女リリー(ケニアで死亡)の夫の後添えベリルが登場し
割ったのでバラ売りのティー・カップ3個(青色、緑色…赤色)を購入
サタースウェイトは初めてのベリルに挨拶
ベリルはバイクで帰る
クィン氏がサタースウェイトに与えたヒントは「赤緑色盲」
サタースウェイトはトム家に到着
トム(卒中で不自由)のスリッパは相変わらず赤と緑の不揃い(トムは赤緑色盲)
庭でお茶会(ティー・パーティ)
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|お茶会の登場人物はトムとサタースウェイト
|亡き長女の夫で義理の息子サイモン(赤毛)、その後添えベリル
|その長男ローランド(トムの孫で将来の相続人)、ベリルの連れ子ティモシー
|ローランドとティモシーとは同じ歳で兄弟同然の仲良し(どちらも赤毛)
|亡くなった次女マリアの夫ホートン博士(医者で娘と近所に住む)
|その長女イネス(トムの孫)
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サタースウェイトはローランドかティモシーのどちらかと結婚するのだろうと夢想
ティー・カップの色は、ティモシーは赤で横に海泡石パイプ、
ローランドは黄色(タバコをやらない)
サタースウェイトは久々に会った青年を眺めていてふと気付いた。
亡くなったリリーに似ているのはティモシー、
ローランドは祖父にも父にも似ていない……
後添えベリルは将来の祖父トムからの相続狙いで、意図的に違えて育てたのではという疑念
サタースウェイトは疑念の眼でベリルの行動を観察
するとベリルはティモシーに用事を言いつけて家へやる、
ローランドにはホートン博士へケーキを出すよう言いつけた
テーブルの周りに誰も居ないのでベリルは皿などの整理を開始
その時、ベリルの袖が赤いカップに触れて落ち割れた
ベリルはそれを片付け代わりに青いカップを持って来、その横にパイプをずらした
そしてティーを注いだ
サタースウェイトはベリルの一連の行動を怪しいと睨んだ(毒でも入れたか…)
戻って来たティモシーはその青いカップを手に…
そこに戻ったイネスは「青は私のよ」と声をかける
ティモシーは応える「これは僕のさ、横にパイプが置いてあるもの」
(ティモシーに「赤緑色盲」の自覚は無いから、色についての発言は一切無し)
(それとも自覚があるから色の発言をしないのか?)
この会話でサタースウェイトはティモシーの赤緑色盲に気付いたのだろう。
(つまりトムの赤緑色盲は隔世遺伝でティモシーへ、だから本当の孫は!!)
そこでサタースウェイトは「それを飲んじゃいけない」と止める。

これが一連の大きな流れだが、
二十歳をとっくに過ぎたティモシー自身に色覚異常の自覚が無いのは変だ。
学校で集団生活していれば、皆とは違うと気づくのが普通だろう。
だから「横にパイプが置いてあるから」と応えたのであろう。
当然、母親ベリルはティモシーが祖父と同じ赤緑色盲であることを知っている。
濃淡で知覚しているティモシーには赤も青も大きな違いは無い。
横にパイプがあれば、ティモシーは青いカップを手にするはずがベリルの目論見


残った疑問というか残る澱・靄(もや)
トム家の人たちはパーティでいつも同じ色のカップを愛用しているのかが不明だが
1.ベリルが陶器店で買った時、まず青色と緑色を注文し…赤色を追加した。
ということは割れたのが青色と緑色で、予備として赤色を買ったと私は思った。
ベリルはその予備の赤色のカップを何故使わなかったのか!?
赤色だったら、イネスは「青は私のよ」と声をかけない。
(イネスのカップが青色だったことはココで読者に判明)
(テーブルからイネスの青色カップを一体誰が片付けたの?)
(最初のイネスの青色カップがその位置に残っていたらイネスは、ティモシーは今度青色に変えたのかなで済んだかも)

2.イネスの青色カップが無いということは、片付けたのはベリルで、
毒入りティーはティモシーとイネスのどちらかが飲めば、という両天秤!?
直系の孫はこの二人なのだから、今回どちらかが死ねば…

3.もしこれが成功してティモシーが死んだ場合(サタースウェイトの観察は誤算だが)、
最初に疑われるのは、給仕を担当した母親ベリルとなる
ベリルはいったいどんな説明をするつもりだったのか!?
ティモシーは青色カップを飲んだから、狙われたのはイネスだったのよ!!
それを間違えて息子のティモシーが飲んだばかりに…嗚呼!!といった感じか。
てもティモシーの青色カップにしか毒が検出されなかった、
そして青色カップにはイネスの指紋も無かった…
いくら母親であっても給仕した人物が一番怪しい事になってしまう。
トム、ホートン博士、サタースウェイトは証言するだろう。
テーブルに近づいて給仕していたのはベリルだけだ!!と…
(衝動殺人じゃないのだから、犯人にはアリバイなどの何らかの無罪証明が必要)
(ベリルに何らかの手持ちが無いと推理ドラマにならない)

4.割れた時に青色のカップを出したということは、
大パーティのために様々な色のカップ予備がまだたくさんあるようだ。
ベリルが赤色カップを使わなかったとしたら、その意図することは!?
「狙われたのはイネスだったのよ!!」という説明ができないからか?

5.庭へ戻って来たベリルは不穏な空気に気付く。
サタースウェイトとホートン博士とが青色カップのティーを調べると…
気付かれたと感じここから早く逃げ出したいベリルのはずなのに、
何故に「おばかさんなおじいちゃんね。…(中略)…片っ方は赤で、もう一方は緑じゃありませんか」という指摘を最後に言い残したのか?
この所為で、この遺伝の所為で、全てはオジャンになったのよ!!、と
作者はベリルに捨て台詞のように無念さ言わせたかったからなのか?
もしこのシーンが無かったならば、戯曲としてもまとまりを欠くことに…
現実では無く、あくまで作品世界なのだから?

推敲不足だがモヤモヤを整理すると一応上のようになる
(追記:疑問をちゃんと整理できないからモヤモヤ感か残るのだけど…堂々巡りみたい)
◆今は学校で子どもの色覚異常の検査があるけれど、
この短編の当時はどうだったのでしょうかねー??
子ども本人は皆がそうだと思っているから気付かないかも、
最初に気付くのは一緒にいる時間が一番長い母親か!?
短編発表の当時、「赤緑色盲」が一般的な知識では無かったとすれば、
ベリルたちが祖父トムと一緒に暮らすようになって初めてそれを知り、
ティモシーも祖父と同じだとベリルはやっと気づいて慄き、
今までの苦労が泡となってしまうと芽生えた殺意…
その臭いを嗅いだクィン氏が登場、という流れか。


私のようにしっくりしていない読者はいないものかと検索してみたが、
それらしいサイトは見つからなかった。
そのうち、いつか三度目に挑戦することとしよう
今のところ、クリスティの短編シリーズものではクィン氏が最高だから
これ以外のクィン氏ものもいつか再読を。
その前に今度は残る未読の戯曲をまず読もう。
(読んだ戯曲は◎「検察側の証人」、△「蜘蛛の巣」、◯「ねずみとり」)
次はポアロもの「ブラック・コーヒー」(初戯曲)を予定


元々推理ものは短編に限ると思っている。
学生時代に読んで今も大のお気に入りの江戸川乱歩の短編以来、
どの分野も短編がベター(ベッドでの読書が多いから今はなおさら)。
長編推理はあんまり読んでいないけど、
犯人捜し的長編で、あれはスゴカッタという記憶に残る作品はあまり無い。
高木彬光「白昼の死角」、天藤真「大誘拐」は痛快だった。
記憶に残る探偵ものは水上勉「飢餓海峡」、大岡昇平「事件」、松本清張「砂の器」ぐらいか。
どれも映画を視たが先かな。
だからミス・マープルやポアロの長編に挑戦することは無いだろう。
読むのに時間がかかるほど犯人捜し的探偵長編は楽しませてくれないが実感だ。
ポアロやマープルだと短編の未読がたっぷり残っているし…

もっと面白い作家が現れたら、すぐに浮気するだろう。
私好みのクィン氏やパーカー・パインのレベルの短編は
私がまだ出遭っていないだけで、たくさんあるのだろうなあ


日本ハムは西武に三連敗
大谷翔平くんは居ないけど、投打で若手が育っているからと思っていたのだが…
失点は多くて得点は少ないという投打が共に悪いパターン
とにかく一勝して勝つリズムを体感しないと始まらない

明日はいよいよ大谷翔平投手のデビューだ!!ワクワクさせてくれるか
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posted by yumenoya at 17:47| Comment(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする