2018年06月17日

◎エラリー・クイーン「Yの悲劇」、残った疑問などをいくつかと感想(ネタバレ!!)

MLB開幕3/30以来、大谷くん出場の試合をネット観戦するのが日課になっていた。
ところが6/9の大谷翔平くんが故障者リスト入りという衝撃ニュースで、
エンゼルス試合がメインという生活リズムがガラッと変わってしまった。
大谷ロスの事実に慣れるのに少しかかってしまった。
この穴は大谷の居ないエンゼルス戦でも、
予想以上に頑張っている日本ハムでも埋めることはできない。
始まったサッカーワールドカップも日本戦ならともかくも、
是非観戦したいとも思わない。


だからベットの中での読書は、軽いものから少し重厚な長編・中篇に変わっていた。
そこで取りかかったのは
エラリー・クイーン、鮎川信夫/訳「Yの悲劇」(創元推理文庫)
以前読んだ「Xの悲劇」はまあまあの印象だったので…
最初に解説を読んだが、かなり評判の作品らしい。
6/14の深夜から6/16の朝まで二泊三日かかった。


そしていくつかの疑問が残った。
ワッセルマン反応
起きてまず検索で調べたのは「ワッセルマン反応」
小説では探偵レーンがハッター家のかかりつけ医者メリアムを脅して視た、
ー家のカルテに「ワッセルマン反応」陽性、陰性…と出てくる。
何かの病気の検査方法なのだろうとは思っていたが「梅毒」だった。
小説の中に「梅毒」という言葉は出て来なかった(と思う)。
祖母エミリーを頂点とする「梅毒」感染一家(先夫との子ルイザを含む)という設定。
私に「梅毒」についての知識は全く無いけど、
「Yの悲劇」が発表されたのは1933年だが、
警察も検事もマスコミも「梅毒」を匂わせるものは一切無かった(と思う)。
これを知っているのは、メリアム医師とレーンと長男の妻マーサに
感染していた自殺したヨークなどほんの一部に限られる。
1933年当時治療方法が無かったからなのか…
大金持ち祖母エミリーが元凶である奇矯な一家
こういう家族を主要登場人物に長編推理をとなると
脈々と遺伝のように感染してきた「梅毒」という設定になったのか?
小説には出て来ないが祖母の父、曽祖父がより上位の元凶という可能性も…
祖母に兄弟姉妹は居ないのか、その子どもたちは今…

それと気になったのは、「梅毒」の症状
祖母エミリーとその長男コンラッドは激昂し易いタイプだが、
「梅毒」に感染した場合、そんな症候が現れるモノなのか?
「梅毒」と激昂で発生した暴力事件・殺人事件についての統計資料でもあるのだろうか?
江戸時代に「梅毒」はかなり多かったと記憶しているけど…
江戸が舞台の小説や風俗・生活につての読物で、「梅毒」と暴力沙汰とを結びつけたものは記憶に無い。
面白くするためのクイーンの創作なのか!?

小説のカルテによると、「ワッセルマン反応」陽性(プラス1)は祖母エミリーのみで
祖母以外は陰性となっているけど、感染症状はあっても陰性となることも…?
メリアム医師もレーンもお手上げ状態の一家だと諦めているような書き方だけど…
(梅毒についてのネット記事を読んで勉強する気は無いけども)

(追記:どう書いてよいのか自分でも判らないのだが、小説の中での「梅毒」の取り扱い方に異様さを感じている。今から85年も昔の作品だから、治療法など取り巻く状況が全く異なるのだけれど、学生時代に読んだ遺伝因子にまつわる本に何代にも亘る犯罪家系に触れたものがあった。並記されていたのは、クラシック音楽家系だ、バッハだったかハイドンだったかな。心理学の遺伝か環境かの章だったと思う。この「Yの悲劇」はその並記に梅毒家系という病気因子を追加したような、ある種の違和感を感じさせた。犯罪家系的なニュアンスでハッター家を扱ったから、読者の私は捕らえられた面もある…この長編の最初の興味誘因はコレだったように思う。このハッター家は"環境"因子…が合う)

ハッター家の見取り図
次は疑問では無いが、小説が提供している見取りが不親切だ
何故に1階の見取り図が無いのか!?
食堂と図書室は主要な舞台なのに…台所も欲しい。
(食料倉庫の部屋もありそう?)
階段の方向、どちらが昇り口で降り口なの!?
それと鉄格子の有無は無くともよいが何故窓の位置が記載されていないのか!?
密室的な設定の小説では、窓の位置を明記して欲しいものだ。
特に「実験室」と「死の部屋」

長男コンラッドの運動靴
つま先の足跡、音を立てずにコッソリと…は判るのだが、
コンラッドの息子ジャッキーは大人サイズの運動靴をどのように履いてつま先で歩いたのか!?
子どもの足でそのまま大人の靴を履いたのであれば、
がふがふ状態だから、つま先歩きは不可能で、靴をひきづって歩くしかない。
つま先で歩こうとしたら、子ども靴を履いたまま大人の靴を履くとしかしないと…
ジャッキーの靴のサイズが判らないと、重ね履きが可能なのかが不明だ。
少々の詰め物じゃ簡単に脱げてしまうので、つま先だけの痕とはならない
気になったので、ラストの講釈も含め靴跡関連部分を読み返したのだが、
レーン探偵が子どもの靴サイズに言及した箇所は見つからなかった。
私が見落としたのだろうか!?

ジャッキー少年がミルクを飲んで死ぬ食堂のシーン
(このことはラストまで読んで判明したのだが)
(最初読み進んだ時には、ピーンとしないシーンだった)
(レーン探偵はまさかそんな事をしないだろうと思っていた)
ジャッキー少年がミルク運びを手伝ったのか、
ルイザの席のミルクコップに毒を入れたと思われる。
(レーン探偵は何処からそれを観察していたのであろう)
前夜は(レーン探偵の企みで)毒入りをルイザに飲ませるのに失敗しているから、
今日こそと思っているジャッキー少年はワクワクと
ルイザがミルクを飲むのを愉しみに待っているはずだが…
レーン探偵は何か簡単な用事をジャッキー少年に頼み食堂を出た間に、
ルイザのコップとジャッキー少年のコップとを取り換えたと理解するしかないが…
肝心のシーンを間近にしてジャッキー少年は果たして簡単に席を外すだろうか!?
(レーン探偵は巧みにそれをやったということにしないと小説が成りたたないから、そう理解はしているけど)

この時に使われた毒についての説明は何も無かった。
私のイメージだけど、無味無臭の液体毒って沢山あるのだろうかねぇ。
ミルクと反応して変色もしないという条件付きで…
それがタマタマ、実験室の火事で生き残っていたと…

ラスト「舞台裏にて」
レーン探偵によるサム警部とブルーノ検事への紐解き解説の章
最後まで一番気になっていた謎は「何故、マンドリンが凶器のなの!?」だった。
祖父ヨークの書いた探偵小説の概略があって、それを読んだジャッキー少年は拙い語彙で解釈した結果が「マンドリン」だったと…

サム警部は「ジャッキー少年は何故自分で毒入りミルクを飲むヘマをやったのか!?」とレーン探偵にぶつける。
それに何も答えないレーン
レーン探偵の決断と行動を察知したブルーノ検事は帰ろうと促す。


レーン探偵の煩悶と決断の結果であるこのラストは
一番ふさわしいのか、ベストなのかも知れないが…
告発人・裁判官・死刑執行人を全て兼ねた神的立場を引き受けたレーン
でも少しわだかまりが残ってしまうラストだ。

《読後の全体感想》
エキセントリックで癖のある家族たち
聾唖で盲のルイザの証言シーン
(私が匂いで真っ先に浮かんだのはバニラ、似た匂いの表現捜しは少し引っぱり過ぎだ)
ヨークの残した小説の骨子とそれを発見したジャッキー少年の幼い解釈
この齟齬が色んな不思議な行動となって警部たちを、そして読者を惑わせた。
これらの設定が眼目となり読み応えのある長編推理となったと思う。
長編推理小説って、さも作りましたという臭みがするから読む気があまりしない方だが、
短編なら面白いのに、長〜く引き延ばされたような印象…というか
「エピローグ」はもう少し書いてくれてもと思うぐらいの削り込み
この「Yの悲劇」は重厚でさすが評判の作品でした。
「Xの悲劇」(新潮文庫、大久保康雄訳)を読んだときには、
それほど面白いとは思わなかったけど…
エラリー・クイーンってアンソロジストとしては知っていたけども
いつか「Zの悲劇」に挑戦かー


次回のブログは、「Yの悲劇」の前に読んだ
小説「2001年宇宙の旅」と映画「2001年宇宙の旅」を予定
こちらを先に原稿を書き始めていたのだが、
推理小説「Yの悲劇」は謎がメインだから、
印象や疑問が新鮮なうちに整理して置かないと忘れてしまうので…
posted by yumenoya at 11:39| Comment(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする